孔明弟が見ている新たな景色『静岡ホビーショー編』

  • 2022.05.15
  • 2022.05.15

無能と言われながら、10年もの歳月を費やして、夏は照りつける太陽の下で、冬は感覚がなくなる指先をもみほぐしながら。牛豚馬鶏相手に、リアルにドロドロ糞尿まみれの3K(きつい・きたない・きけん)な重労働に従事して来た。舌足らずな喋り方がキュートな豊田さん。いつも寄ってきては、前日の夜に見た大人のDVDの内容を一生懸命に話してくれる。

誕生日には母親が大人のDVDを買ってくれたと喜んでいる。ケルヒャーで豚房を掃除している腰谷さんは、出荷が終わりガランとした広い豚舎内で、顔に跳ねた糞を付けながら遠い目をしながらヨダレを垂らしている。豚の糞だらけになった同僚達が労働修了後、一斉に流れ込む風呂場。お湯と言ってもぬるくて臭く、身体の隅々、毛穴に至るまで臭いが染み付いてしまう。一向に上がる気配のしない月収20万円の給料。

人の慣れは怖いもので住めば都。匂いも気にならなくなってくる。年月だけが積み重なる。そうこうしている内に、手の第二関節と足の指の関節が次々と腫れて強い痛みを発するようになった。つま先で大地を踏みしめることができずかかとでしか歩けない。

朝のこわばりもあり、起床時の関節の痛みや腫れは特に強くなり。目を開けた後もしばらくは身体を動かすこともできず。痛み止めにロキソニンを常用しなければ活動ができない。しかし、一日の実質労働時間は12時間〜15時間。ただひたすらどん底を生き抜いてきた孔明弟は、新たな景色を見るために前に進もうと決意した・・・。「プロバイヤー」としての道、その先にあった世界とは?

2台の車に乗り込み「静岡」へ旅立つ一行

朝の東急二子玉川駅前、高級車が止まり学生たちが通学のために降りてくる。そんな中でジャケットとリュックサックという少し変わった組み合わせの格好をした男たちが集まって来た。年齢は30代〜60代とバラバラ。どこかの企業に勤めるサラリーマン御一行というわけでも無さそうだ。それもそのはず、彼らは「プロバイヤー集団」。20年の巨匠ミスタロイを筆頭に、第一期生から孔明弟、第二期生から2名、第三期生から4名総勢8名。

「ロイ式」を通してプロバイヤーとしての道を歩み始めている彼らは、それぞれ2台の車に分かれて乗り込んだ。最初の目的地は、東名高速道路の「富士川SA」。日本一富士山が美しく見えるサービスエリアと言われている。自然と写真撮影会が始まっている。東京に住んでいる方々にとって、距離的には近くても意外となかなか行く機会が乏しい。関西から来られた方々にとって、西側からの富士山はとても新鮮なようだ。広場に穴の空いた石のオブジェがあり、穴を通して富士山を覗き見ることが出来る「富士山覗き穴」。

日本人特有の富士山信仰的な概念をうかがわせる。当然、「ロイ式」プロバイヤー御一行も、SA内のスタバで購入したカップを片手に、「大人の遠足」気分を味わっていた。今回一行が目指しているのは、「ツインメッセ静岡」。静岡市まではもう目と鼻の先。再び車に乗り込み30分ほど走らせることで、10時ジャストに到着。今回一行が訪れたのは、『静岡ホビーショー』。1959年静岡市の料亭「浮月楼」にて開催された「第一回生産者見本市」から数えて今年で開催「第60回」を迎える。

「模型の世界首都へようこそ」という意味深なキャッチコピーが看板に刻印されている。今回の出展は合計80社+2団体。模型系の戦車や戦闘機に便乗しているのだろうか?なぜか、「自衛隊広報コーナー」も。陸軍からは16式機動戦闘車や軽装甲機動車等リアル戦車も展示。海軍からも、海上自衛隊の日頃の活動を知ることができる展示物も。

孔明弟はじめ「ロイ式」にとっては「初参加」

実は今回「ロイ式・プロバイヤー御一行」が、『静岡ホビーショー』に訪れたのは始めただった。展示物的にも、「少年の心を持った大人たち」にときめきを抱かせるものばかり。プロバイヤーとしての活動4年目となる孔明弟も、胸踊らせながら受付に向かっていた。一行は、事前に登録しておいたQRコードをかざし、入場証と昭和風デザインの紙袋を受け取った。胸ポケットには名刺入れ。これで展示場内巡りの装備品は揃った。

会場に入ってからは、孔明弟は、最初に決めたセオリー通り、師匠であるミスタロイのすぐ斜め後ろのポジションをガッチリキープしながら。プロバイヤー特有の「ブースはしにらみ」歩行で会場内を隅から隅まで練り歩く。どんなカテゴリーの商品を扱っているのか?奥に潜み隠れているであろう定番商品とは?最近の傾向とは?「プロバイヤー」の基礎に立ち返りフラットな視点から判断しながら、ターゲットとなるメーカーを絞り込んでいく。

流石はホビーショー、どのブースにも「少年の心」にダイレクトに響くものばかり。ついつい足を止めたくなってしまうのを我慢。途中で基準をずらすべからず。しかし、ブースの数自体は「ギフトショー」などと比較するとそれほど多いわけではないので。「はしにらみ歩行」は比較的すぐに終了。今度は、胸ポケットから颯爽と名刺を取り出す身構えをしながら。索敵したメーカーのブースに単身切り込んでいく。

『ホビーショー』では、他の展示会とは異なり、どこで売っているのか?誰が買うのか?などの質問は愚問。ゆえに、話法は「◯◯◯◯◯◯◯!」に徹する。「プロバイヤー」4年目にもなるとここらへんの臨機応変さは自然と身についている。しかし業界ごとに商習慣に異なる部分がある。こと『静岡ホビーショー』に出展しているようなメーカーとは、小売店は原則的に直取引は行われていない。メーカー「どこの問屋さんとお付き合いがありますか?」当たり前のように尋ねられてしまう。

さらには、「この地域ならこの問屋さんですかね?」問屋ごとの縄張り意識も強い。これを理解して攻略できなければ、なかなかうまい「プロバイヤー」としての立ち回りはできない。孔明弟は、メーカーの担当の紹介を経て「問屋ブース」へと足を運ぶ。ゴゴゴゴゴゴ

どの問屋さんのブースにものれんが掛かっており、一見さんお断り感オーラをビンビン放ちまくっている。これが、一年目の孔明弟だったら、その時点で心が折れて、「今日は、良い商品が見つかりませんでした・・・」と逃げて返ってきそうであるが。既に大抵のケースは経験済み。「◯◯◯◯さん(メーカー)から、 こちら一押しとご紹介いただきまして、、」その後、「◯◯◯◯戦法」で攻略。まるでそうするのが当然かのごとく、お取引申込書を受取、後日FAX注文を約束して「問屋ブース」を後にする。つまり、「プロバイヤー」としての「商談成立」であった。

ロイ式慰安旅行

開始から4時間が経過14時に。再集結した「ロイ式・プロバイヤー御一行」。よく歩き、よく喋り。皆、お腹を極限まで空かしている状態。「静岡ならではの美味しいものを・・・」予めミスタロイが厳選済みの海の幸を。再び2台の車に乗り込んだ一行は、漁港側にひっそり佇む知る人ぞ知る海鮮丼専門店へ。別足でかけつけた孔明弟と同期第一期生のKZ氏も現地で合流し。鮪丼、海鮮丼に舌鼓を打ち、「ロイ式慰安旅行」と化す。満足感に浸りながらそのまま海沿いを走らせ「三保松原」へ。

平成25年6月に富士山世界文化遺産の構成資産に登録、日本新三景の一つである。松とは思えない巨木が茂り、荘厳なたたずまいを感じさせる。松林を抜けると海岸の向こうに富士山が佇む。富士山と海のコントラストに、自分がまるで絵画の世界に足を踏み入れたような錯覚を覚える。お腹も、心も満たされた「ロイ式・プロバイヤー一行」は、帰路へ。

帰りの車中では、今回販売権を獲得した商品の話。これから先の人生、「ロイ式」を武器にどうなりたいのか?どんな家に住み、どんな車にノリたいのか?など。各々の胸の内を交わしていると。あっという間に、東急二子玉川駅に到着。今回の、「ロイ式プロバイヤー旅」『静岡ホビーショー編』の幕を閉じた。以上。かつて、どん底の人生を歩んでいた、孔明弟が、新たな景色を見るために前に進もうと決意した。「プロバイヤー」としての活動の一ページを切り取らせて頂いた。