「在宅ワーク化」で日系企業の「働き方」が大きく変貌を遂げる
- 2020.08.19
- 2020.08.18
あなたは外資系企業のオフィスを訪れたことがあるだろうか?僕がはじめて外資系企業に訪れたのは、営業マンとして大手チェーン系の本部商談をしていた頃。
大手チェーンの本部としては、イトーヨーカドー本部、イオン本部、ユニー本部、セブンイレブン本部、ファミリーマート本部、ローソン本部、問屋さんと共に各有名チェーン店の本部に訪れ、バイヤーと本部商談。
しかしこれらのチェーン店の本部は全て、典型的な日系企業の雰囲気が漂っている。そんな中で、川崎にあった米国に本社を持つ「トイザらス」の本部だけは全く違う雰囲気だった。
日系企業のオフィスは、部長などの職位を持つ偉い人から平社員まで、同じ部屋の中で、ズラリ並んでいて、一体感のようなものがある。僕が勤務していた会社のオフィスの中と、あまり変わらない。ところが「トイザらス」の本部だけは、各部門のバイヤーは皆、個室が与えられていて、個室の中に籠もってお仕事をしている。
アシスタントバイヤーや事務担当者などは、個室こそは与えられていないが、隣の席と隣の席の間には、昭和時代の漫画喫茶の個室のような、敷居のようなもので区切られていて、プチマイルームのような感じになっている。
孔明「え?これで一体どうやって上下左右の社員同士が会話するのだろう?」
純粋に疑問に思うほどに驚いたのを記憶している。日常の業務の遂行だけではなく、どうやって日常のOJTなどを行っているのだろうか?
目次
上司や先輩の背中から学ぶ
僕が勤務していた会社もそうだが、日本の企業は基本的に、入社時点では即戦力という形にはなっていない。
例えば、上場企業に新卒で入社した際は、業務のことは全く知らない状態で入社。2、3ヶ月間に渡る、新入社員研修を経て、現場で働く先輩・上司たちの待ち受ける部署に配属され。「島(シマ)」と呼ばれる課長がエンド席に座った、縦長の列の末席に座る形になる。隣の席には、一番自分に社歴も近い先輩から。主任、係長・・・という形で並んでいて、エンド席の課長に辿り着く。
そういう環境の中で、日常的に先輩や上司が、隣から声をかけてくれたり、自分からお伺いを立てたりしながら一緒になって業務を遂行して行く。
先輩「孔明、こういうメール送る時は、こういうふうな言い回しにした方が良いよ!」
上司「孔明、商談どうだった?なるほどね、次はこういう風にしてみれば?」
日常的なやり取りの中で、徐々に業務を学んで行く。時に社内に凄い先輩や上司がいる時には、チラチラのぞき見するかの如く、御方々が何をやっているのか?その背中から学んで行く。
一度部署に配属された後は、新人研修の時のような「セミナー形式」で学ぶ機会は皆無で。上司、先輩方と一緒に、動きながら、走りながら、アドバイスをもらいにいったり、褒められたり、叱られたり、しながら、年月の経過と共に徐々に仕事ができるようになって行く。
後輩が入り、部下ができて、かつての自分と同じように、後輩・部下たちも年月の経過と共に仕事が出来るようになって行く。
タバコ部屋コミュニケーション
社歴がかさみ、社内での人間関係が構築できはじめたタイミングで。僕が上手に活用していたのは、タバコ部屋コミュニケーション。当時はスモーカーも多かったので、タバコを吸う上司や先輩がいると一緒にタバコ部屋に行く。
営業会議などが開催された後も、「いつものメンツ」でタバコ部屋になだれ込む。その中で、営業会議では「建て前」的な発言ばかりをしていた上司や先輩たちも。
上司「さっきはああは言ったけど、孔明の場合はこうしてもいいぞ!」
「ホンネ」ベースでいろいろなアドバイスをはじめとするお話をしてくれる。時には、部署の垣根を超えて、他の部署の有名人とタバコ部屋で鉢合わせた時は、畑違いのお話を聞かせて頂くこともある。
「タバコ部屋コミュニケーション」は、香港支社に異動した後も存在していて。そちらでは、支社長と一緒にタバコ部屋に行き、ザックバランに語り合う。支社長と一緒にさらに上の統括とも直接お話をさせて頂く機会も頻繁にある。
ここでは、会議の中では絶対に聞けないような、人事などにもまつわる「おとなのお話」もポロリと耳にすることもある。当然ながら、「タバコ部屋」で構築された人間関係は強く、いろいろな面で、便宜を図ってもらえることもある。職位を超えた方々とのコミュニケーションの中で、学ばせて頂くことは多い。
「外資系企業」には日系式の「OJT」は存在しない
聞けば、「トイザらス」などの外資系企業には、・上司・先輩の背中から学ぶ・タバコ部屋コミュニケーションこのどちらも存在しないとのことだった。日本企業特有のものだと。
たとえば、小売チェーンの現場で絶大な力を持つバイヤー。何も知らない新卒新入社員の状態から、社内の「OJT」を経て、徐々にプロとしての経験・スキル・知識を身に着けながら、徐々に職位を上げて完全な個室を持つバイヤーになるのではなく。バイヤーは最初からバイヤーとして、採用される。
つまり、入社してすぐに個室を持つバイヤーになるのだと。
唯一あるケースとすれば、バイヤーが退職した後、アシスタントバイヤーがバイヤーレベルのスキルを認められれば、そこで昇進がある位だろうか?ただし、僕が日本で勤務していた時には、このケースさえ見られなかった。
つまり、外資系企業の場合、「OJTは会社の外で自分でやってこないとダメ」ということ。雇用された直後には、即戦力になっていないと、お話にならない。その上で、目標数値を達成し続けることができるかが、厳しく問われる。目標数値を達成し続けることができなければ。即解雇も十分ありえる世界。
そういう世界では、上司・先輩が、懇切丁寧に教えてくれることもない。上司・先輩の背中から学ぶということもない。ましてや、「タバコ部屋コミュニケーション」などは論外。
必要なスキル・経験・知識は、会社の外の世界で、お金、時間、労力を別途費やして学んで来る必要がある。それを聴いた時、
孔明「ああ、就職したのが日系企業で良かった・・・。」
僕は本気でそう思った。
「働き方」が外資系企業化する日系企業
なんで、突然こんなお話をしたのかと言うと。実は、「コロナ渦」ではじまった、「在宅ワーク」というものが、日系企業の各社に本格的に導入されるということは。近い将来、「在宅ワーク」を採用する、全ての日系企業は、「外資系企業」のように、なって行くということだ。
「在宅ワーク」では、「ZOOM」や「メール」「チャット」を用いて上下左右の方々と一緒に仕事をすることになるのだが。これが本格稼働すると、
- 上司・先輩から教わることができない
- 上司・先輩の背中から学ぶことはできない
- タバコ部屋コミュニケーションなにそれ?
会社に入社後に、上司・先輩方々から学ぶという部分が、大きく欠如してしまう。
例えば、あなたが上司・先輩と直接お話する機会は、「ZOOM」を通してのみという形になるが。一日中「ZOOMつけっぱなし」という方法は、採用していないと思う。何かしらの、打ち合わせや、ミーティング、会議などの時だけ「ZOOM」に接続する形だと思う。
そんな中、上司・先輩たちが、あなたに求めて来るのは、「結果」や「結論」のみ。
日常的な細かいやり取りを経て・・・というプロセスが欠如した状態で、「アウトプット」だけが見られたり、求められたりすることになる。外資系企業のような、自分の個室やブースといった形で、上下左右の同僚たちとの、空気感を完全に遮断した状態で、お仕事をする状態に近い。
どこをどう想定しても、「会社の就業時間中に学べる機会・時間」というのは大きく欠如してしまう。つまり、これから「在宅ワーク」が本格的に進むに連れて、日本企業も、外資系企業のように、様変わりしはじめることが、容易に想定できる。
そうなってくると、「今は何も知らないけど、会社に入れば、日常業務の中で学べるだろう・・・」「今うまくできなくても、上司・先輩がアドバイスしてくれる中で、成長できるだろう・・・」こういう期待は、一切持てなくなる。
「在宅ワーク」で求められるアウトプットの基準を満たすために、至らない部分があるのだとすれば、外資系企業のように、就業時間以外の時間を使って、必要なスキル・経験・知識を、自分でお金・時間・労力を使って、学んで来ることが求められるのは必須。これは、サラリーマンの道を極めた、「地下ソサエティ」特別講師の一人、ミスタヤマキもハッキリとおっしゃっていたことだ。
そして今、政府は日本の企業に対して「7割在宅ワーク」を要請している。すなわち、これから2、3年の間に、「日本のサラリーマン」の働き方はこういう意味でも大きく変革を遂げる。
大きな変化の中で、あなたはサラリーマンとして、どう考え、どう行動するのか?起こってしまってから、慌てて考えて、行動してしまったのでは、全てが後手後手になってしまう。
あるがままに、適当に流されていただけでは、「在宅ワーク」からあぶれてしまうことは必須。「サラリーマンとして生きる道を、誰からどうやって学ぶのか?」予め想定できることには、事前に対策と準備を整えて臨むことが求められる。